第213章 誰かが名指しでお会いしたいと申しております

夜はすっかり更けていたが、時間としてはまだ遅くない。いつもならこの時間、両親は裏庭を歩いて食後の散歩をしているはずだし、兄たちが家にいるなら中庭の灯りもついている。まして厨房や使用人部屋のほうは、誰かしらの気配があるのが常だった。

それなのに今夜は――。

エステート全体が、しんと静まり返っていた。

本館も、玄関ポーチと数本の廊下灯が点いているだけ。中は真っ暗で、人影ひとつ見えない。

……おかしい。

鳳咲夜は宝生尊の手を引き、車を降りるなり早足で本館へ向かった。

指紋ロックに触れる。

カチャリ、と軽い音を立てて解錠された。

扉を押し開けると、室内は壁灯がいくつか灯っているだけで...

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