第218章 彼女は逃げ出さなければならない

静心別荘の住まいは、古い洋館を改装したものだった。外壁には常春藤がびっしりと絡みつき、壁際には太い鋳鉄の雨樋が、屋根から地面までまっすぐ伸びている。

鳳美桜の瞳孔が、きゅっと縮んだ。

――この建物の間取り、覚えてる。

主寝室と書斎は二階、階段に近い位置。彼女が閉じ込められているこの客間は一番奥で、窓の下には……あの雨樋。

窓は鍵がかかっていて開かない。けれど二階の部屋は、ここだけじゃない。

鳳美桜は息が詰まり、頭の中で必死に二階の配置をなぞった。

廊下の突き当たりに物置がある。普段から鍵がかかっていて、食事を運ぶ使用人ですら入らない場所だ。

監視が今ほど厳しくなかった頃、彼女は...

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