第219章 ご主人様の家のことは気軽に口にしていいのか

鳳美桜は頭皮がびりっと痺れ、反射的に身を低くすると、そのまま脇の茂みへ飛び込んだ。

足音が、遠くから近づいてくる。

小径の向こうから、荷物を提げた使用人が二人。歩きながら、ひそひそと話している。

「この数日、エステートのほうは本当に大変みたいよ。奥様が達司様に付きっきりで、台所の煮込みまで自分で見てるって」

茂みの中で伏せていた鳳美桜の身体が、びくりと硬直した。

達司様?

鳳達司――鳳宗一郎の異母弟で、薬を誤って飲んでしまい、知的に障害が残って療養院へ送られた、あの弟?

鳳美桜は息を殺し、草の隙間へ頬を寄せる。ひとことも聞き逃すまいと、耳をそばだてた。

「そりゃそうよ」もう一...

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