第231章 何か問題でもありましたか

笹本公輝は振り返った。

「シャツが破れたなら替えなさい。総務に予備がある。上長のサインをもらって、そのまま受け取ってきて。デザイン部は会社の顔よ。そんな格好じゃ印象が悪い」

笹本公輝は、裂けた襟元に視線を落とし、気まずそうに頷いた。それから静かに執務室のドアを閉める。

鳳咲夜は、閉まった扉を見つめたまま、ほんの少しだけ意識が遠のんだ。

しばらくして、小林秘書がノックも控えめに入ってくる。そっとコーヒーを机に置き、息を潜めるように一歩下がった。

鳳咲夜は目を閉じて数秒、ふいに口を開く。

「小林秘書。さっきの笹本公輝……普段から少し気にかけてあげて。母親の病気でお金が要るらしい。今回...

ログインして続きを読む