第256章 彼女が順調に逃げられるように

「うん、分かった」

鳳咲夜は短く応じた。

「監視映像、こっちに回して」

スマホを切り、鳳咲夜は視線を上げて宝生尊を見る。

「イムルのほうが動いた」

そう言うなり立ち上がり、宝生尊の手首を掴んで人混みを割った。展示ホールの裏手、スタッフ専用の通路へと足早に折れ込む。

茶几の上にスマホを平らに置く。画面が点き、静心別荘の監視映像がリアルタイムで映し出された。

イムルは山中の死角に、こっそり追加のカメラまで仕込んでいたらしい。

映っているのは、ロイヤル・クレスト・エステートの温泉。

鳳美桜と江崎拓海が、湯舟の縁にいた。

鳳美桜は薄手のニットカーディガンを羽織り、籐椅子に腰掛けて...

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