第260章 お前を騙しているんだ

取引は、最後まで滞りなく終わった。

江崎拓海が契約書にサインを入れ、買い手の代金は約束どおり彼の個人口座へ振り込まれた。

スマホに届いた入金通知。そこに並ぶ長い数字を見た瞬間、指先が勝手に小さく震える。

深く息を吸い、画面を消す。拓海は鳳美桜へ振り向き、肩を抱いて、やわらかく笑った。

「よし。全部片付いた。帰ろう」

豪邸へ戻るなり、美桜は待ってましたとばかりに言った。

「お金、もう口座に入ったよね。明日、銀行に付き合って。現金に替えて、私が持ってるほうが安心だから」

拓海の、湯呑みを持つ手がぴたりと止まった。

彼は湯呑みをテーブルへそっと置くと、ゆっくり立ち上がり、美桜を見下...

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