第266章 この人は誘惑に耐えられない

鳳宗一郎は口を開きかけ――そのまま言葉を失った。

まるで、その一言に喉元を塞がれたみたいに。

彼はくるりと背を向け、江崎拓海に背中を見せたまま、歯の隙間から絞り出す。

「三日……三日でいい。だが覚えておけ。この三日の間に、鳳美桜の髪が一本でも――」

「伯父上、ご安心ください」

江崎拓海が間髪入れずに被せた。

「鳳美桜は、いま俺にとっていちばん大事な人です。手のひらに乗せて守るのも追いつかないくらいなのに、どうして辛い思いなんてさせますか」

鳳宗一郎と鳳琴音へ軽く頭を下げる。礼儀正しい所作――だが、目の奥の得意げな光だけは隠しきれていない。

そして踵を返すと、足早に車へ戻り、ド...

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