第273章 彼が私に殺させたんだ

須藤康光はぎょっとして手が震え、万年筆の先が契約書をずるりと滑って、長いインクの筋を引いた。

勢いよく顔を上げる。まだ舞っている埃が落ちきらないうちに、ひとつの影が扉の外から踏み込んできた。

濃色のタイトスーツ。低い位置でまとめた髪。背筋はまっすぐ、刃物みたいに研ぎ澄まされた立ち姿。なにより――その顔だ。目に入っただけで、須藤康光の背筋が凍る。

鳳咲夜――!?

まずい。結局、あいつに嵌められた……!

だが今は、買い手に文句を言っている暇などなかった。

須藤康光の手から万年筆がぱたんと机に落ち、顔色が目に見えて真っ白になる。

反射的に一歩下がり、ふくらはぎが背後の折り畳み椅子にぶ...

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