第280章 彼女の未来へ駆け赴く

宝生尊はようやく我に返り、彼女の背後へ回ると、両手をそっと肩に置いた。

「やっと分かったよ。昔の帝王が、美人の笑顔ひとつで国まで捨てた理由。俺が王様だったらさ、咲夜が目の前に立った瞬間、国なんていらなくなる」

鳳咲夜はくすっと笑い、彼の手の甲を軽くぱしんと叩く。

「はいはい。これ以上しゃべったら、今日の婚約披露宴、私ひとりで出ることになるわよ」

宝生尊は笑って一歩退き、彼女へ手を差し出した。掌は上向き。

「準備はいい? 俺の婚約者」

鳳咲夜がその掌に指先を預けた瞬間、彼の指がきゅっと締まり、逃がさないとでも言うように強く握り返す。

二人は肩を並べ、メイクルームを出た。

宴会場...

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