第50章 この人物は身近にいるかもしれない

それは、鏡越しの自撮りだった。

カメラは鏡に向けられていて、そこには男の裸の背中が鮮明に映っている。

広い肩、絞られた腰。筋肉のラインは滑らかで、くっきりしているのに誇張がない。どの筋も、力強さと美しさを「ちょうどいい」ところで主張していた。

暗い陰影の中、背筋は深い溝を描き、スマホを握る腕の筋肉がわずかに盛り上がる。

そして最悪に――いや、致命的に――まずいのが、背中の縦のラインだった。脊柱に沿って深く落ち込み、その先は写真の端で巧妙に切り取られた影へと沈んでいく。想像を呼び込む余白。色気が、殺しに来ている。

鏡の中の男はわずかに首を傾け、額の前に湿った黒髪が無造作に垂れていた。...

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