第70章 誰かが我慢できなくなった

鳳咲夜は最短ルートで実験棟へ駆けつけた。

近づく前から、鼻を刺すような焦げ臭さがぶわっと押し寄せ、目の奥がつんと痛む。

廊下は、まさに修羅場だった。

実験室の中では、いくつもの装置がまだ黒煙を吐き、焼け焦げた配線がジジッと火花を散らしている。廊下のガラスは粉々に砕けて床一面に広がり、天井のスプリンクラーが作動して、ザァザァと水を降らせていた。

空気には濃い薬品臭が滞り、喉の奥がひりつく。

研究員たちは廊下の端に固まって身を寄せ合い、震えながらうずくまっていた。数人の女性研究員は目尻が赤い。相当怯えたのが、見ればわかる。

誰もが実験室の方を凝視し、足を踏み入れようとする者はいない。...

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