第74章 この金は持つと手が焼ける

男の罵声が、ぷつりと途切れた。

正面の黒い車、その運転席のドアが開く。細く、背の高い影が、悠然と地面へ降りた。

月光に縁取られた冷ややかな横顔――去ったはずの鳳咲夜だった。

男の顔から血の気が引く。だが鳳咲夜は慌てる様子もなく、淡々と言った。

「林部憲康。研究所の警備隊長、林部重雄の一人息子。自分で降りる? それとも私が引きずり出す?」

林部憲康の瞳孔がきゅっと縮み、顔色が紙みたいに白くなる。

二秒ほど固まったのち、彼は泣き笑いみたいな歪んだ笑顔を必死に貼りつけた。

「鳳さん? あ、あなた……もう帰られたんじゃ……どうして、こんな夜中に……。研究所のほうで、何か追加のご指示でも...

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