第75章 私はあなたがうらやましいだけだ

トランクの中は、ぎっしりと――札束で埋まっていた。

全部、5,000円札。きっちり束ねられたそれが、整然と積み上げられている。

影山陽斗は一目見ただけで、奥歯がきしむほど腹が立った。

なんでこんな奴が、こんな大金を手にできるんだよ――。

鳳咲夜は一瞥しただけで察した。

これが例の手付金だ。

林部宪康は、口座に置いておくのが不安で、現金で丸ごと引き出したのだろう。

鳳咲夜が大掛かりに動き出した以上、いずれ自分に辿り着くと踏んだ。だから解禁直後の混乱に紛れて、今夜のうちに金を抱えて逃げるつもりだった――。

「林部宪康。金のために親父まで見捨てるの? あの人、まだ研究所にいるのに。...

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