第100章 無事で済むと思うな

水紀は半歩だけ下がった。怖かったわけじゃない。ただ、この男から立ちのぼる汗の匂いがあまりにもきつい。

むっとして、吐き気がこみ上げる。

「……なに」

男は嘲るように口端を吊り上げた。

「今さら怖くなったか? 俺の女にちょっかい出したとき、今日みたいな目に遭うって想像もしなかったんだろ」

「武勝」

車から夏川理奈が降りてきた。頭も腕も包帯だらけ、足も引きずっていて、正直――滑稽だった。

理奈は風岡武勝の腕に縋りつき、可哀想ぶった声でしゃくりあげる。

「ちゃんと懲らしめて……私の仇、取ってよ……」

「任せとけ、ハニー。お前はあっちで隠れてろ。巻き込まれたら困る」

夏川理奈は尊...

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