第55章 彼に面目を立てない

萩原寧々は髪を整え、口紅を塗り直した。自分で丹念に選び抜いたワンピースに視線を落とし、今日の自分は仕上がっている、と満足する。

会場にどれだけ令嬢が集まっていようと、容姿も気品も、自分に並ぶ者はいない――そう確信できた。

もともと胸元の開いたドレスの上にファーコートを羽織っていたが、歩きながらそっと肩からずらしていく。白く柔らかな肌が覗き、伏せた瞳で、いちばん「守ってあげたくなる」表情を作った。

「きゃっ!」

御堂蓮司のそばまで来たところで、わざと足を滑らせる。華奢な身体が、ふわりと前へ倒れ込んだ。

「ごめんなさ……」

かすかな息を混ぜた声で詫びながら顔を上げ、何度も鏡の前で作っ...

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