第75章 彼女は諦めない

萩原寧々が執事の声のほうへ視線を向けると、野村卓真はひとりで来ていた。

それを確認して、ようやく胸の奥の息が抜ける。

「若様、逃げられました」

その一言に、萩原寧々の顔色がほんの少しだけ戻った。

「ですが、例の家の借主の情報は掴みました。通信会社にも当たって、直近の通話履歴も引き出しています」

野村卓真の視線が、萩原寧々へとまっすぐ刺さる。

「履歴を見る限り、最も通話回数が多い相手は――寧々さんの番号です。さらに、口座には寧々さん名義からの高額な送金記録も残っていました」

「加えて、つい十分ほど前に、寧々さんからの着信が複数回。すべて未応答になっています」

野村卓真が言葉を重...

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