第78章 契約書すらない

膝をついていた男が、よろめきながら地面に崩れ落ちた。瞳いっぱいに浮かぶのは、救いようのない絶望だった。

新しい責任者が来た――正義感があって、やり方も容赦なく、筋の通らないことは許さない。そんな噂を彼らは信じた。ようやく誰かが自分たちの代わりに声を上げてくれるかもしれない。そう思って、命がけで告発状を会社へ届けたのだ。

だが数時間も経たないうちに、その告発状は井上正司の手元にあった。

「まさか本気で、社長がテメェらみたいな下っ端の味方をするとでも思ったのか? この告発状が俺のとこに来たってことは、社長もお前らの生き死になんて興味ねぇってことだ」

肉体の痛みと、心の痛み。二つが重なり、...

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