第81章 あの男を殺せ

突然の怒号が夜の静寂を裂いた。

水紀は、殺気を顔いっぱいに貼りつけた坂井西尾が突っ込んでくるのを見て――天が落ちた気分になる。

合図を待てって言っただろ! なんで勝手に飛び出してきてんの!

水紀が反応するより早く、御堂蓮司にぐいっと引かれ、背後へ押しやられた。彼は前に出て、警戒を崩さず庇う。

坂井西尾は半分ほど駆けたところで、男の背後にいる荻原さんが必死に手を振っているのに気づいた。

撤退しろ、という合図だ。

坂井西尾は、ぴたりと足を止めた。周囲に立ちのぼっていた殺意が、ふっとしぼむ。

「坂井の兄貴、なんで止まるんすか!」

「撤収だ」

坂井西尾は手を上げて命じると、踵を返し...

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