第85章 選べる男はたくさんいる

社長室の空気が、瞬く間に気まずいものへと沈んだ。

水紀が何か言うより先に、ケイディが怒りを露わに割って入る。

「萩原社長が結婚してるかどうかなんて関係ない。あんたみたいな立場の人間が、手の届く相手じゃないの!」

「今の俺じゃ、まだ足りないのは分かってる。でも必ず努力して、世界一流のネットワークエンジニアになる! 君に一番いい未来を渡したいんだ!」

白坂敬太が女に本気で惚れたのは、これが初めてだった。

これまでずっと一人で生きてきた。人付き合いは面倒で、他人と関わるくらいならコードの世界に籠もって、数字の静かな快楽に浸っているほうがいい。

この先も一人のまま――そう思っていた。

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