第92章 彼らの家

野村卓真はハンドルを握りながら、水紀に説明した。

「水紀さん、この道の両側、もともとは何もなかったんですよ。荒れた山ばかりで。ここにある花は……全部、若様が世界中から運ばせて植えたものです」

水紀の胸が、ひゅっと縮む。

この道だけでも、少なく見積もって七、八キロはある。これだけの花を、ここまで見事に咲かせるには――どれほどの手間と時間が要るのか。

「……私のために、そんなふうに時間を無駄にしなくていいのに……」

彼には、もっと大事な用事が山ほどあるはずだ。

「君のためなら、無駄じゃない」

御堂蓮司の声は低く、軽いのに、甘やかしが隠せない。「気に入った?」

水紀は意地を張る。

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