第101章

その頃、黒田理沙は控室にいた。

姿見の前に立ち、ふと視線を落として自分の裾を確認する。

黒いドレスの左側に、よく見ないと分からない程度の水染み。さっき黒田美穂がうっかりこぼしたものだ。

理沙は眉をひそめた。

アトリエから適当に持ち出しただけの、別に高価でもない一着。けれど、だからといって雑に扱われていいわけがない。

それ以上に、半乾きのまま授賞式を最後まで座り切る気にはなれなかった。まして青山夫婦に見られたら、どうしたのかと問い詰められて、余計な心配までかける。

スマホを取り出し、トーク画面を開いて数行だけ打ち込む。

「翠ヶ丘通りの店、すぐ出せるドレスある? 京清市国際会議場の...

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