第12章

その声音には、いかにも程よい労わりが滲んでいた。けれど、目尻だけはわずかに吊り上がっている。

「もう家に帰ってきたんだから、遠慮しないでいいのよ。自分の家だと思いなさい」

自分の家。

たったそれだけの言葉を、あまりにも自然に言ってのける。

黒田理沙は目を上げ、彼女をひと目だけ見た。何も言わず、その一箸の料理を取り、ゆっくりと口に運ぶ。

青山美玲の口元がふっと持ち上がる。さらに何か言おうとした、そのときだった。青山彩の声が、かすかに震えた。

「理沙……」

黒田理沙が顔を上げると、青山彩の目はうっすら赤くなっていた。箸は茶碗の縁に置かれ、理沙の茶碗に小山のように積まれた料理を見つめ...

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