第121章

青山彩は隣に腰掛け、夫が娘の話をするのを聞きながら、また目元を赤くした。けれど口元の笑い皺だけは、どうしたって隠せない。

「理沙って子、頑張りすぎよ。今日も研究所で用事があるって、こんな時間まで帰ってこない。お昼に電話して『戻って食べなさい』って言ったのに、何かのパラメータ直してるとかで、適当に二口三口かきこんで切っちゃって。夜も『今日は無理』だって――」

「誇らしいのに、胸が痛いの。まだ戻ってきてどれだけ経ったっていうのに、あの子、自分を追い込みすぎよ」

青山博文が手を伸ばし、妻の手の甲をぽん、と軽く叩く。声音は穏やかだった。

「若いのが仕事に熱を入れるのは、悪いことじゃない」

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