第128章

川村南は何も言わなかった。

視線を若い女の顔から外し、店員が両手で捧えるように持っているコートへ落とす。ほんの一瞬だけそこに留まり、すぐに引き戻した。

――何を考えてるんだろう。

今の自分に、あんな服が買えるはずもないのに……。

川村南は深く息を吸い、胸の奥で膨れ上がる屈辱を押し殺すと、くるりと背を向けた。俯いたまま、一歩、また一歩。出口へ向かう。

背後から、女の子たちのひそひそ声が飛んでくる。大きくも小さくもない。ちょうど、耳に刺さる音量。

「中山家のお嬢様が目ぇつけたものに、あの子も手ぇ出す気?」

「どう見ても安いバイトでしょ。目の保養しに来ただけじゃない?」

「その格好...

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