第132章

右手の親指と人差し指の付け根が、大きく擦りむけていた。さっき倉庫に押し込まれたとき、ドア枠に引っかけたのだろう。

そのときは痛みなんてまるで感じなかったのに、黒田理沙に問われた途端、じわっと灼けるような熱さが広がった。

「かすり傷です。大丈夫です」

そう言って手を引っ込め、袖で雑に拭う。

黒田理沙は立ち上がると、トランクから救急セットを取り出した。左手でポビドンヨードの包装を破る。

川村南が慌てて駆け寄り、彼女の手から綿棒を受け取ろうとする。指先が小刻みに震えていた。

「私がやります」

黒田理沙は一度だけ川村南を見て、綿棒を取り上げる。手早く傷口を拭い、ガーゼを当て、テープの端...

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