第158章

黒田理沙は、彼が何を考えているのかなど知る由もない。手のひらについた埃をパンパンと払うと、くるりと振り返って言った。

「何ぼさっとしてんの。行くよ」

花村尚希は彼女を見つめ、少し間を置いてから、ふっと笑う。

「今行く」

そう言って、歩幅を合わせて後を追った。

理沙が先に外へ出る。肌を撫でる夜気は、焦げた匂いと血の匂いを含んでいた。

黒狼組の本部は、すでに修羅場のあとだった。壁の傷、散らばった破片、床に残る足跡――あちこちに乱闘の爪痕が刻まれている。

そのとき、遠くから細い影が勢いよく駆けてきた。弾んだ声が、はっきりと喜びを帯びる。

「師匠!」

理沙が足を止めた瞬間、小柄な少...

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