第160章

その頃、研究室では黒田理沙が最後の試薬をそっと置き、装置の駆動音がゆっくりと落ちていった。やがて機械が停止する。

脇にいた研究員たちが解析結果を覗き込み――次の瞬間、弾けるように声を上げた。

「成功だ! 本当に成功した! 解毒剤の活性が三倍だ!」

研究室は一気に沸き立ち、歓声が天井を揺らす。だが、黒田理沙はただ小さく息を吐いただけだった。

完成した薬剤へ視線を落とす。瞳の奥に、ようやく満足の色が差した。

このロットがあれば、いくつもの問題が片づく。

それから数日。念初組は解毒剤の量産に踏み切った。箱、また箱。薬剤は本社から途切れることなく搬出され、デルタ地帯の各区画へと運び込まれ...

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