第175章

彼女の背後、半歩下がった位置にもうひとり。灰色の使用人服に身を包み、顔を伏せ、肩をすくめている。何かを恐れているみたいに。

さっき理沙にぶつかった、新人メイドだ。

黒田理沙は視線を引き、口元だけをふっと持ち上げた。

立ち上がらない。犬のそばにしゃがんだまま、指先で顎の下をくすぐってやる。

気持ちいいのだろう。大きな犬はごろんと転がり、腹をさらして四肢を投げ出した。尻尾がさっさっ、と地面を掃く。

「いいご身分ね」

声は軽い笑みを含んでいるのに、視線だけは暗がりの二人から外れない。

「よしよし。遊ぼっか」

言い終えるなり、理沙は足元の湿った土をひとつかみ掬い上げ、ゆっくりと青山美...

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