第184章

彼女は視線を落とし、胸の奥で渦を巻きかけた感情をぎゅっと押し込めた。顔を上げたときには、口元に笑みを乗せている。

「分かった、春樹兄。安心して仕事して。自分で自分を飢えさせたりしないから」

青山春樹はその言葉にふっと笑い、瞳の奥に沈んでいた薄い陰りがようやくほどけた。

取り箸を手に取り、彼女の皿へ魚の身をもう一切れ置く。

「よし。それならいい」

……

午後。兄妹は会社の用事を片づけると、連れ立って病院へ向かった。

車が青山附属病院の正門をくぐった瞬間、黒田理沙は窓越しに灰白色の建物をちらりと見上げる。

エントランスホールは広々として、植え込みはきっちり刈り込まれていた。行き交...

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