第204章

黒田美穂は俯き、顔を彼の掌に埋めた。肩が小さく、ふるふると震える。

――俯いたその瞬間、口元の弧はもう押さえきれなかった。

やった。

ついに、彼を引き留めた。

     

二時間後、黒田家のリビング。

黒田美沙子はソファに腰を下ろし、雑誌をめくっていた。玄関の扉が開く音がして、ふと顔を上げる。

入ってきたのは黒田美穂だった。

目元は赤いのに、唇には笑みが浮かんでいる。

「ママ」

黒田美沙子は一瞬きょとんとして、雑誌を置き、立ち上がった。

「どうしたの? 何かあった?」

黒田美穂は母の前まで歩み寄り、深く息を吸う。声には、抑え込もうとしても滲み出る高揚が混じっていた。

...

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