第210章

オークショニアの声がふたたび会場に響いた。けれど黒田理沙には、さっきから周囲の視線が、途切れ途切れに自分へ流れてくるのが分かる。

彼女は俯いたままカタログをめくり続け、横目で隣の花村尚希を盗み見た。

尚希は横顔のまま、視線だけを理沙に落としている。口元のわずかな弧は、大原宗佑が膝をついた瞬間から一度もほどけていない。

……何その顔。

理沙は呆れて、すっと顔を背けた。

K社長という立場は、本当はこんな場で表に出したくなかった。

大原宗佑の土下座があまりに速すぎて、止める暇すらなかったのだ。

「面白い」

花村尚希が、笑いを含んだ声で呼ぶ。

「K社長」

「呼ばないで」

理沙は...

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