第214章

黒田理沙はうつむき、もう一度その契約書に目を落とした。

確かに彼女は、デパートの区画を探していた。

エイミーのアトリエの新シリーズは来月には店舗で販売が始まる。以前、田中菜々緒にいくつかのデパートの賃料や出店条件を調べさせたものの、これといって決め手になるところが見つからないままだった。

その話は、田中菜々緒に一度だけしたはずなのに。

「……どうして知ってるの?」

「スマホに通知が出たとき、見えた」

花村尚希は悪びれもせず言い切る。

「画面が光ってたから、ちらっとな」

「わざとじゃないけど見えた」みたいな顔をされて、黒田理沙は一瞬、言葉に詰まった。

彼女は契約書を最後のペー...

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