第218章

井口景太はその場に立ち尽くし、頬を赤く腫らしながらも他人のために頭を下げ続ける黒田美穂を見つめた。胸の奥で、いったんは緩みかけていた何かが、ふにゃりと完全にほどけてしまう。

彼は身を屈め、美穂の腕をそっと支える。声はさっきよりも低い。

「立て。お前のせいじゃない。あいつの代わりに謝る必要なんてない」

黒田美穂は支えられて立ち上がる。涙はまだ、ぽろぽろと落ち続けていた。

その動きは、わざとらしいほど軽く、丁寧だった。ひとつひとつが計算され尽くしているみたいに。

井口景太は、耐え忍ぶようなその表情を見て、胸の柔らかい部分がまた少し沈むのを感じた。

そして顔を上げ、黒田理沙へ視線を向け...

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