第228章

黒田美沙子はその場に立ち尽くし、胸が激しく上下していた。怒りと悔しさでいっぱいなのに、ぶつける先が見つからない。

そのとき――ホテルのロビーのほうが、にわかにざわつき始めた。

スタッフたちが一斉に手を止め、揃って正面玄関へ向き直り、軽く頭を下げる。

支配人が小走りで入口へ駆け寄り、自ら分厚いガラス扉を開け放った。

外の灯りがどっと流れ込み、車から降りてくる一つの影を照らす。

正門前に、黒いロールス・ロイスが音もなく停まっていた。

ドアが開き、ひとりの女が降りる。

白いトレンチコートに黒のパンツ、フラットシューズ。手には小ぶりのバッグ。

肩に落ちた長い髪が夜風にふわりと揺れる。...

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