第240章

黒田美沙子が脇に立ち、せかせかと問いかけた。

「誰なの?」

「田中家だ」

黒田守は眉間を揉みほぐす。

「城南の田中家が、俺の持ち株を引き取るって言ってきた」

黒田美沙子の目が、ぱっと光った。

翌日。田中菜々緒と黒田守はカフェで顔を合わせ、話は思いのほか順調に進んだ。

買い叩かれることもなく、手続きも簡単。黒田守はその場でサインを入れる。

署名を終えると、田中菜々緒は契約書を丁寧にしまい、ふと思い出したようにコーヒーカップを持ち上げて一口含んだ。口調はあくまで気軽だ。

「うちと取引してくれたお礼に、ひとつだけ“ひっくり返せる”話をあげる。来週、市内で最高ランクの土地オークショ...

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