第242章

黒田美穂は奥歯をぎり、と噛み砕く勢いで食いしばった。だが胸の内では、別の算段が一瞬で狂ったように回り始める。

このまま黒田理沙に、いい思いだけさせるわけにはいかない。

理沙みたいなクズでも引っかけられるなら、黒田美穂ができない道理がどこにある?

今日、隙を見て青山家の次男に取り入るか、あの黒いスーツの社長にでも近づけたら――黒田家は即座に息を吹き返す。自分の将来だって、もう安泰だ。

「青山社長、青山夫人、遥斗さん……いやあ、偶然ですね。黒田グループの黒田守で――」

黒田守は体裁など投げ捨て、黒田美沙子と黒田美穂を引っ張るようにして前へ出た。尻尾でも振りそうな媚びた笑みで、どうにか縁...

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