第30章

花村研介は黒田理沙をじっと見つめ、喉の奥を絞るような声で言った。

「……何が壊れたって?」

黒田理沙は指輪を裏返し、指の腹を台座の内側――ほとんど見えないほど細い筋の上にそっと当てる。口調は落ち着いていた。

「ここ。金糸で留めてある連結部が切れてます。この指輪、前世紀の御用職人の作りで、荷重はこの一本の金糸で受けてる。ここが切れると、宝石の力の掛かり方が崩れます」

顔を上げ、花村研介をまっすぐ見る。

「直さないと、早ければ数か月、長くて一年か二年で石が緩んで落ちます。それに、切れ口の金糸、刃みたいに立ってるから……指を切りやすい」

花村尚希の視線が、理沙の指先が示す場所に落ちた。...

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