第48章

黒田理沙はちらりと視線を落としたが、振りほどかなかった。

車はルイチュアン・グループの前で停まる。

黒田理沙は手を引き抜いてドアを押し開けた。背後から、花村尚希の声が追いかけてくる。

「退社後、迎えに行く。もう姿を消すな」

黒田理沙は答えない。ドアを閉め、そのままビルへ向かった。

背中に突き刺さる視線が、彼女が正面玄関をくぐるまで離れなかった。車がゆっくり走り去った気配がして、ようやく空気が軽くなる。

ホールに入ると、林谷孝太郎がすでにエレベーター前で待っていた。

腕に抱えた書類の束を整えながら、黒田理沙の姿を見つけると小走りで近づき、軽く一礼する。

「黒田社長。本日のスケジ...

ログインして続きを読む