第52章

花村尚希は彼女を見つめ、目の奥にわずかな困り顔を滲ませた。

「親父、明日が誕生日なんだ」

黒田理沙はこくりとうなずき、その先を待つ。

「退院したいって言い出してさ。それで手続きしに来たついでに、具合も見てきた」

花村尚希はひと呼吸置いた。

「医者の話じゃ、経過はかなりいいらしい。家で静養しても問題ないって。で、明日の退院の段取りを全部つけて、病室に顔を出したら――」

そこで言葉が切れ、彼の口元がぴくりと引きつる。

「親父が聞くんだよ。嫁は来たのかって」

黒田理沙は黙ったまま、彼を見返した。

「まだ来てないって言ったら、あからさまに機嫌悪くなってさ。自分の誕生日なんだから、息...

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