第54章

花村尚希は拗ねても無駄だと悟ったのか、おとなしく座り直した。

「それで……」

言いながら、彼はまた少しだけ彼女のほうへ身を寄せる。ごく自然な仕草で手を伸ばし、黒田理沙の手をきゅっと握った。

「今から飯、食いに行く。約束しただろ。毎日一回、俺と一緒に食べるって」

「いつ私が“毎日”なんて約束したの?」

「昨夜」

断言。まるで事実を読み上げるみたいな口ぶりだった。

「おまえ、“毎晩一回”って言った。時間と場所はおまえが決めるって。で、今夜はまだ決めてない。だから俺が決める」

黒田理沙は口を開きかけ――そのまま閉じた。確かに言った。完全に言質を取られている。

一秒だけ黙り、ふっと...

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