第58章

「理沙、来てまだどれくらいだ? もう少し座っていけよ。キッチンに頼んでスイーツでも包ませようか」

「結構です、おじさま。また今度、伺います」

黒田理沙はすでにバッグを手に取っていた。

花村研介は引き留めきれないと悟り、渋々立ち上がって彼女に続く。父子が左右から挟むようにして、名残惜しげに玄関まで見送った。

ドアノブに花村尚希が手を伸ばした、その瞬間。

外で、どん……と腹に響く雷鳴。

続けざまに、ざあああっ――滝のような雨が叩きつけてきた。

「うわ、雨か!」

花村研介の目が、ぱっと光る。

――しまった、という顔を自分で打ち消し、わざとらしく咳払いをしてから、困ったふうに肩をす...

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