第59章

二階の客間。黒田理沙は足先で扉を蹴り開けると、花村尚希をベッドへと寝かせた。

呼吸はわずかに上がっている。だが表情はどこまでも落ち着いたまま。

手際よく救急箱を開け、ポビドンヨード、ガーゼ、綿棒、止血帯を順に並べる。無駄のない動きだった。

顔を上げる。うつ伏せになった花村尚希の白いシャツは、血に汚れてまだらに染まっていた。白布の上の暗い赤が、いやに目に刺さる。

「シャツ、脱いで」

花村尚希はゆっくりと上体を起こし、ボタンを外しながら理沙を見る。

一つ、二つ、三つ……長い指がわざとらしいほど丁寧に動く。急ぐ気配など欠片もない。

シャツが開く。引き締まった胸板、くっきりとした鎖骨。...

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