第70章

婚約者。

花村尚希の耳がぴくりと動き、口元がゆるんだ。どうしても、抑えきれない。

理沙が、自分を婚約者だと認めた。

青山美玲はその場に立ち尽くしたまま、もはや顔色が悪いなどという言葉では足りないほどだった。

その視線は、黒田理沙の首元のネックレスから、花村尚希の口元に浮かぶ隠しきれない笑みへと移る。水の入ったグラスを持つ指先は、力が入りすぎて関節が白くなっていた。

このクズ女……。

言い返したい。けれど、花村尚希のあの締まりのない顔を見た途端、喉元まで出かかった言葉が少しずつ引っ込んでいく。

無理やり笑みを作り、ゆっくりと背を向けると、そのまま二階へ上がっていった。

花村尚希...

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