第74章

彼女は指先で頬をなぞるように下ろした。涙にぐずぐずに濡れて、原形を留めない顔があらわになる。

「最初は私だって被害者だったの。中村慶太よ。高給の仕事で釣ってきて、『俺について来てちゃんとやれば、いずれ会社は俺たちのものだ』って。……それで、薬を盛られて……あいつと、最初の……。夫に申し訳なくて、関係を切ろうとした。そしたら動画を撮ってて、『言うことを聞かなきゃ旦那に送る、家族にも送る、ネットに流す』って……」

声がぶつぶつ途切れる。溺れた人間が、最後の浮き木に爪を立ててしがみつくみたいに。

「死にたいって思った。ほんとに、死のうって……でも、怖かった。子どもがまだ小さくて……だから、逆...

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