第8章

花村雪乃は花村茂雄の腕を支えながら、外へ出てきた。顔にはまだ、拗ねたような悔しさが残っている。

ふと目を上げると、廊下の突き当たりで花村尚希と黒田理沙が並んで話しているのが見えた。

あの男が黒田理沙に向ける目――

花村雪乃はきゅっと奥歯を噛みしめた。

どうして、あの女なの。

そのとき、隣で小さく咳払いがした。

花村雪乃ははっとして視線を引き戻し、父を見た。

花村茂雄の顔色はまだひどく青白い。けれど、その目だけは刃のように鋭く、重たく娘を射抜いていた。

「お父さん……」

花村雪乃の胸がどくりと鳴る。

「さっき研究室で、おまえが口にしていたことは――」

花村茂雄の声は低く沈...

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