第80章

リビングには再び静けさが戻っていた。残っているのは、川村南が押し殺すように漏らすすすり泣きと、母親の途切れ途切れの荒い息づかいだけ。

床一面に散らばった砕けた破片。壁には暗い赤の血飛沫がいくつか点々とつき、ナイフは壁際に転がっていた。刃にはひやりとした光が一筋、折れたように宿っている。

黒田理沙は川村南を見て、ほんのわずか口元を緩めた。

「よくやったわ」

川村南は手の甲で顔の涙を乱暴に拭い、黒田理沙の前まで歩いていくと、深々と頭を下げた。隣では母親も床に手をついてどうにか立ち上がり、ふらつきながら腰を折る。

「黒田社長、ありがとうございます……今日、社長が来てくれなかったら、私も母...

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