第81章

城海通りの工場前。

黒田理沙は通話を切り、スマホをポケットへ滑り込ませると、道路脇に立った。

――そのとき。背中に、ぞっとするような悪意の視線が刺さる。

理沙は振り向いた。

路地の入口に、黒々と人影が固まっている。

先頭に立っていたのは川村野々花。赤いタイトなワンピースは変わらないが、裾には大きく灰が擦りつき、膝には擦りむいた傷が残っていて、血がまだじわりと滲んでいる。髪も乱れ放題だ。

もともと整った顔立ちではない。そこへ片頬が腫れ上がっているものだから、滑稽ですらあった。

その背後に、三十前後の男。派手な柄物に身を包み、襟元からは小指ほどの太さの金のチェーンが覗いている。

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