第83章

黒田理沙は視線を引き戻し、川村南を見た。

「もう大丈夫よ」

川村南はまだ目尻が赤いまま、力いっぱい頷く。

「黒田社長、ありがとうございます」

「仕事に戻って」

そう言い置いて、黒田理沙は自分のオフィスへ向かった。

廊下の向こうから山口晴子が足早にやって来る。腕には数冊の書類。黒田理沙の歩調に合わせて並んだ。

「黒田社長、中村慶太の件ですが――」

「目を離さないで」

黒田理沙はオフィスのドアを押し開け、振り返りもせず言う。

「今日、給湯室で平気で人を罵る。明日はもっと踏み込むわ。背後に誰かいる。少しずつ掘って」

「承知しました」

山口晴子は書類を机に置き、そのまま静かに...

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