第91章

原田岳は彼女の向かいに腰掛け、白いシャツの袖を肘のあたりまでまくっていた。覗く手首は無駄がなく引き締まっている。

穏やかな笑みを浮かべたまま、彼は財布からカードを一枚抜き取り、黒田理沙の前へすっと差し出した。

「理沙、これ……この前の案件のデザイン料だ。ずっと受け取ってくれないだろ。俺の方が落ち着かない」

黒田理沙はカードに目を落とし、首を振る。

「いいです、原田先輩。あの件、私、そこまで力になれてませんし」

「力になれてない?」

原田岳は笑った。そこには、懐かしむような苦味が混じっている。

「君の案で、俺は十数億を取り戻した。君がいなければ、あのプロジェクトは文字どおり全部溶...

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