第94章

翌日、彼女はその上着を手に取ると部屋を出て、廊下の奥へ向かった。

青山美玲の部屋は廊下の突き当たりにある。扉は半開きで、隙間から黄みがかった灯りがこぼれていた。

黒田理沙はその扉を押し開けた。

青山美玲はドレッサーの前に座り、手に櫛を持っていた。物音に気づいて振り向き、黒田理沙の手にある上着を見た瞬間、顔に貼りついていた笑みがぴたりと固まる。

「お姉ちゃん?」

黒田理沙は上着をベッドの上に置いた。

「着て」

淡々とした声だった。

青山美玲の笑顔が、そこで完全に消えた。

上着を見て、それから黒田理沙を見る。目の奥に一瞬だけ後ろめたさが走ったが、彼女はすぐにそれを押し隠した。

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